社会保険労務士として、企業へ指導助言する中で、
法令に関する内容が問われる事は意外と少ないです。
顧問先の多くが中小企業という事情もあるかと思いますが、
膨大な法令を読み込んで対応しなくてはならない神経質な事態に接する機会は本当にまれです。
中小企業において本当に必要とされている人事労務上の指導助言とは、
法令知識をベースにしない指導助言、だと、考えさせられる場面よくがあります。
私がよく相談を受ける内容は、賃金金額の設定です。
既存従業員の雇用の安定を確保する為、相場等を考慮し、妥当な金額を知りたいのです。
この際、単に、金額をお答えするだけでは、不十分です。
その金額とした考え方を、一般会話レベルの話し方に合わせ、お話しし、
社長から「そうか」と言って貰う事が大切です。
ある企業で、中途採用をかける事になった時には、
「転職される方は、今度こそ定年まで安心して働ける、
しっかりとした会社に入りたい、とみんな思っているのですよ」
とお話ししました。私が、ハローワークに記載する文面を一生懸命考えていたところ、
「前、ハローワークの求職者はイマイチだったから」
と、気乗りしない様子でした。そして、前回社長が自分で記載した求人票を見せてもらい、
前述の通りに答えたのです。すると、
「片手間に記載しただけだったから、相応の求職者しか応募が無かったんだ」
とご納得の様子でした。
「そもそもきちんとした求人票じゃないと、求職者の幅を狭めるだけです」
と補足しました。
また、職場になじまない従業員さんがいて、「何故こうなるのだろう?」
との質問に、ます、その方の心理面を推測して説明し、
そして、現在の状況に至ったであろう経緯をトレースしてみました。
解決策まで提示する事はできませんでしたが、理解が進んだ分、
「何とかしなくちゃいけないな」と、
前向きに取り組む姿勢を持っていただく事につながりました。
この3ケースは、
賃金額の設定根拠
求人内容の重要性
従業員の心理状況
を説明したものです。
全て、法令をベースに対応したケースではありません。
しかしいずれも、
法令に基づく指導助言をした時より、高い満足度をもたれたと感じました。
今後、今回新しく作ったこの「人事コンサルティング」書庫に
実際の事例集を少しずつ、収録していきたいと思います。