イオン社労士事務所のブログ

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労働契約法③

本日の6条以降は、第2章にかかります。 

第二章 労働契約の成立及び変更

(労働契約の成立)
第六条 労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。


労働契約の原則論が記されています。そして、ぞれぞれの合意がある事を強調しています。


(労働契約の内容と就業規則との関係)
第七条 労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。


就業規則の記載事項が労働契約の内容となりうる事を明記しています。労基法においても、同じ様な取り決めが有ります。しかし、こちらの法律では、あくまでも労働契約という範囲で、就業規則の労働契約への適用が認められることを記しています。そして、その就業規則が周知させていた場合に限定しその効果を認めています。労基法では、周知する事と、その内容が労働条件となる事とは、それぞれ独立し、別途に記載されています。周知が行なわれている事が原則としています。判例により、周知されているならば、という要件が求められる事が普遍し、今回の労働契約法に同時に記される配慮が行なわれたかと思います。


(労働契約の内容の変更)
第八条 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。


労働契約の内容変更は可能であると記しています。この事について、互いの同意を経る事が前提とされています。不利益変更については、判例により、従前から同様の考え方が有ります。しかし、この条文を見る限り、利益変更についても互いの合意が求められるようです。処遇がアップする変更の場合、労働者側の合意はほぼ得られる事と考えられます。そのため、実務上、例えば昇進する際、労働者側の合意の意思表示を得なくても可能ではないでしょうか?辞退の申し出があれば、それに従い、辞令を取り消しすれば済むと考えます。特に意思表示が無い場合、歓迎と捉えられたと考える事ができると思います。ただし、昇進であっても、責務が重くなる事や拘束時間が増える事などを理由に歓迎しない考えの人や、都合が悪くなる環境の労働者もいるでしょう。ここでは、契約という概念で捉える以上、どのような変更でも合意を前提とすることを求めています。


就業規則による労働契約の内容の変更)
第九条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。


周知されている就業規則ならば、労働契約の内容となりうると前々条に記しましたが、本条では、その就業規則を変更したとしても、不利益変更の場合は、労働者の同意が無ければ無効であるとしています。就業規則の変更は、法令の基準を満たしている限り、可能です。つまり、契約時に法令基準をかなり上回っていたところを、最低基準に下げることはできます。しかし、その効果は、労働者が同意していない限り、及ばない形となっています。


()→無し
第十条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。


就業規則の変更による労働契約の変更は9条では、労使の合意が求められているとしていたところ、本条の条件を満たした手続きによる就業規則変更ならば、その合意は不要としています。そして、その手続きとは、判例による普遍的な基準を記してきました。4条件あります。1.不利益の程度、2.必要性、3.相当性、4.交渉状況。これらは、その実効性が問われたとき、労働基準監督署では、判断できない内容です。そして、従前の労働契約により、このような就業規則の変更を影響を受けない特約を設けられることが記されています。ここのところは、実務上、影響を受ける労働契約ならばその旨を記した方が、トラブル防止につながるかと考えます。

就業規則の変更に係る手続)
第十一条 就業規則の変更の手続に関しては、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第八十九条及び第九十条の定めるところによる。


就業規則変更については、この法律には定めを置かないこととしています。労基法では、就業規則の変更時には、作成と同様に、過半数労働者代表から意見を聞くようにとしています。

本日で、第2章が終わりです。