イオン社労士事務所のブログ

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中小企業における病欠時の給与

従業員の年次有給休暇の取得がほとんどゼロという企業が多く有ります。
これは、いろいろな理由で、そういった事態になっていることと思います。

そして、こういった企業の中で、基本給などの月例給与を
病欠時にも満額支払う、という取扱いをされる企業に多く出会います。
労働者の年休取得がほとんどゼロの企業に限って、
病欠しても給与が満額という事が割合多いのです。

逆に、労働者が年休を取得しやすい企業は、
病欠したら年休とされない限り、その病欠分の給与が
当然のごとくカットされます。

この取り扱いについて、
それぞれ全く逆の考え方からそういった運用が生まれているところが
興味深いです。

年休取得がほとんど無い企業は、実は、年休制度を整備していない企業が大半です。
その為、整備を勧めると、上記のような説明をなされます。
『うちでは、従業員が病気で休んでも、月給を出してるよ』
と大変多く言われます。

初めて聞いたときは、何んと矛盾的な考え方をされるのだろうと返す言葉も有りませんでした。
しかし、こういった答えをされる企業は数え切れないほど存在します。

企業としては、病欠しても満額支給することが、最高の経営方針だと信じて疑っていないようです。
この事は、それだけを見れば素晴らしい事ですが、
その一方で、こういった企業に限って、年休が無いのです。

年休が無い代わりに、病欠しても満額支給だよ、と返答されます。
この答えが、
年休なんかより素晴らしい制度を採用しているよ、という意味と
年休が無いようだけど実質的にはあるのだよ、という二つの意味を込めているようです。

思い出します、初めてそういった返答を聞いたときは思考回路が麻痺したものです・・・

前提として、こういった取扱いをされる企業は、日給月給制度を知らない場合がほとんどです。
ですから、病欠して、欠勤控除する事を悪い事のように考えていると思われます。
まずは、ここを理解してもらう事が先決です。
そして、年休をあてがうなら、控除無しで、という段取りを説明すると、理解が得られやすくなります。

年休取得が認められない病欠であったり、年休を使い切ったら、
欠勤控除できますよと説明すると、やや納得をされるようです。

そもそも、年休制度を構築せず、病欠時の満額支給と取扱いをすると、フェアでは有りません。
何日の病欠まで対応してもらえるか、誰まで対象となるか、
こういった定めが全く行なわれていないからです。
ルールは、事業主の頭の中、となってしまいます。

年休ならば、法令により、労働者の持分が決まり、誰にも公平に権利がもらえます。
こうでなければ労働者の士気・意力は向上しませんから、
事業の健全な発展は得られないと考えます。

P.S.
上記内容に沿って、労働条件の変更を行なうと、不利益変更に該当するとされる可能性があります。
変更前には、充分に説明を行なって、労働者から個別に同意を得て下さい。